オフショアとは？

オフショアとは

「オフショア」という言葉は、英語の「offshore」に由来し、shore（岸）とoff（離れる）とが合わさった語句のことです。本来の意味は「岸から離れること」ですが、ビジネスの分野では特定の業務を海外の企業に委託することを指します。

企業がオフショアを活用する最大の目的はコスト削減にあります。特に、日本国内に比べて人件費の安いアジア諸国の企業に業務を委託するケースが一般的です。これにより、企業は人件費を抑えながら業務を継続できるため、競争力の強化にもつながります。

アウトソーシング・BPOとの違い

オフショアと混同されやすい言葉として、「アウトソーシング」や「BPO（ビジネス・プロセス・アウトソーシング）」がありますが、それぞれに明確な違いがあります。

アウトソーシングとは、企業が業務の一部またはすべてを外部の企業に委託することを指します。委託先が国内外を問わないため、必ずしも海外に業務を移すわけではない点がオフショアとの違いです。

BPOは、特定の業務プロセスを専門性のある企業に一括して委託する形態を指します。これも委託先が国内外どちらの企業でもあり得るため、オフショアとは異なります。ただし、委託先が海外企業である場合は「海外BPO」と呼ばれ、これはオフショアとほぼ同義になります。

BPOはアウトソーシングの一種ですが、より業務範囲が広く、委託先が業務遂行において比較的自由度を持つ点が特徴です。企業の戦略的な業務効率化の手段として活用されることが多く、特にコスト削減や業務の専門性向上を目的として利用されます。

IT業界におけるオフショアの意味

IT業界におけるオフショアは、自社で行っていた業務を日本よりも人件費の低い海外に委託または移管することで、人件費削減を行うことを意味します。特に、海外の安価な労働力を活用してシステム開発を行うことは「オフショア開発」と呼ばれ、IT業界で広く採用されている手法です。

IT業界では慢性的な人材不足が課題となっており、国内で優秀な人材を確保するには、人件費を上げるか、コストを維持しながら人材の質を妥協する必要があります。そこで、コストを抑えつつ優秀な人材を確保する方法として、オフショア開発が注目されています。

その他業種でのオフショア

金融業界におけるオフショア

金融業界で「オフショア」という言葉が使われる場合、それは非居住者向けに税制が優遇されている国や地域を指します。金融市場には、国内の投資家や企業同士の取引、国外の投資家や企業との取引、そして取引当事者の双方が国外にいる場合の三つのパターンがあります。

国内の投資家や企業が関与する取引は「オンショア市場」と呼ばれ、その国の金融規制や税制が適用されるのが原則です。一方、取引の両者がともに国外の投資家や企業である場合、「オフショア市場」となり、国や地域によっては税制や金融規制の面で優遇措置を受けられることがあります。

このような優遇措置が設けられた特別な地域は「タックスヘイブン」と呼ばれます。これらの地域では、投資や事業を通じて得た収益に対して税金がかからなかったり、通常よりも低い税率が適用されたりすることが特徴です。

こうした税制上の優遇措置を活用し、各国の企業や投資家が資金を運用するケースが多く見られます。タックスヘイブンは、海外からの企業誘致や投資を促進するために、意図的に低税率や税制の柔軟性を打ち出しているのです。

製造業におけるオフショア

製造業におけるオフショアとは、労働コストが低く、豊富な労働力を有する国々に製造工程の一部またはすべてを移管することで、生産コストを大幅に削減し、大量生産を可能にする手法です。

この戦略が特に適しているのは、労働集約型の工程です。例えば、最終製品の組み立て作業や縫製工程、さらには完成品の保管や配送といったプロセスは、労働力の確保が容易で人件費の低い地域へ移転することで、コストを抑えつつ効率的に進めることができます。

顧客対応業務（カスタマーサポート）

企業が提供する商品やサービスに関する問い合わせ対応や、返品・交換手続き、不具合やトラブルの対応といった業務の一部を海外に移すことで、コスト削減や対応時間の延長といったメリットを得ることができます。

もともと企業がカスタマーサポート業務を国内の別企業へ委託するケースは一般的ですが、オフショア化ではその委託先を海外にも広げ、コストを抑えながら効率的な運営が可能となります。特に人件費が比較的低い国を選定することで、コストを削減しつつ、大量の問い合わせに対応できる体制を整えることも可能に。

また、時差を活かし、24時間対応のカスタマーサポートを実現できる点も大きな利点です。例えば、日本企業がアジアや中南米の国々にサポート拠点を設置することで、日本の営業時間外でもユーザー対応が可能に。これにより、顧客満足度の向上やグローバル展開を視野に入れたサービスの強化が期待できます。

経理業務（バックオフィス）

企業のコア業務以外のバックオフィス業務においても、オフショアを活用するケースが増えています。高度な専門知識が求められる業務のオフショア化は難しいものの、日常的に発生し、一定のルールに基づいて処理できる業務は、海外拠点へ移管しやすい分野と言えます。

例えば、経理部門では請求書処理や経費精算、給与計算などの業務が、オフショア化に適した業務でしょう。また、人事部門においては、採用活動のサポートや勤怠管理といった業務が対象となります。

総務部門では、オフィス管理や出張・旅行手配、受付業務などがオフショアの活用に向いています。法務部門では、定型的な契約書の作成や法務調査といった業務も、標準化しやすいため海外に委託しやすい分野です。